「ベルギー王立美術館展」その1

かわった外観


国立国際美術館(4/7-6/24 2007) 5/4観覧


読売新聞大阪本社 展覧会公式サイト
http://www.yomiuri.co.jp/osaka-event/royal/


国立国際美術館に行くのは初めてだった。
肥後橋から適当に歩いて中之島方面を目指したら案外迷わずに着いた。
当日(金曜日)は開館時間を延長しており、夕方から鑑賞。そのためか人は少なめで、ゆったりと見ることができた。とくにこの日の昼間にみた「ダリ展」*1の大・大混雑の後だから尚更ありがたかった。しかし、ふつうでもこんなに空いてるのだろうか。だとしたら少々勿体無い気もする。

展覧会ではベルギー王立美術館のコレクションより、16・17世紀フランドル絵画から、象徴派、20世紀のシュルレアリスム作品に至るまで、様々な時代のベルギー美術を展示する。その点、去年のプラド美術館展(06/10/1718の日記参照)は、とくにバロック絵画の展覧会という印象があるので、同じ海外美術館の来日展とはいえ、構成の仕方が違っている。作品は基本的に古いものから時代順に展示していたので、よって今回の目玉というべきイカロスの墜落」は冒頭にいきなり登場した。

イカロスの墜落」は日本初公開とのこと。作者については諸説あるらしく、今回はピーテル・ブリューゲル〔父〕(?)とクエスチョンが付く。この絵自体のことはたぶん、大学の西洋美術史系の講義で初めて知ったが、イカロスといえばそう、小学校の音楽の時間の・・・
むーかーし ギリシャーの イカロースーはー・・・というあの歌を思い出す。
マイナーなメロディーに、ロウの羽が溶けて云々という内容、子供心にはいささかトラウマになりそうであるが、実際絵を前にしてみると、そういう悲劇的な感じはほとんどない。海辺の村の風景がのどかに描かれ、例のイカロスは周囲からまるで気付かれもせず…という噂どおりの不思議な絵。この不思議さの理由のひとつには、リアルでないところが絵の随所にあるからではないか?と思った。

全体として、やわらかい色彩で緻密なのだけれど、イタリア・ルネサンスのように研究された徹底した写実ではない(といってよいと思う)。そしてこの絵、「影」があまり無いのが特徴的ではないだろうか。画面の左右などに暗くなった部分はあるが、ものに光が当たって出来た明確な影はよく見出せない。人物にしてもその他にしても、影が濃く伸びておらず、(後の時代の劇的な絵画のように)光と影の区別がさほどはっきりしないで、画面は均質的に明るくボワッっとしている。また別に、左の方に生えている画中ではいちばん大きい樹の、幹のかたちがくねくねとしていて現実の植物とは思えない(ルソーの絵にありそうな感じがする)のも気になった。

こういった写実に徹していない要素と、主題の謎とが合わさって、この絵独特の雰囲気を作り出しているように思われた・・・。
と、このように色々と考えられるのも、混雑しておらずじっくりと作品を鑑賞できたからにほかならないわけだ。

(つづく)

*1:「生誕100年記念 ダリ展 創造する多面体」@サントリーミュージアム[天保山] 3/8-5/6 2007