だてう

ぼろぼろな駝鳥


何が面白くて駝鳥を飼ふのだ。
動物園の四坪半のぬかるみの中では、
脚が大股過ぎるぢやないか。
頸があんまり長過ぎるぢやないか。
雪の降る国にこれでは羽がぼろぼろ過ぎるぢやないか。
腹がへるから堅パンも食ふだらうが、
駝鳥の眼は遠くばかり見てゐるぢやないか。
身も世もない様に燃えてゐるぢやないか。
瑠璃色の風が今にも吹いて来るのを待ちかまえてゐるぢやないか。
あの小さな素朴な頭が無辺大の夢で逆まいているぢやないか。
これはもう駝鳥ぢやないぢやないか。
人間よ、
もう止せ、こんな事は。

これは高村光太郎の詩である。

先日、高校時代の国語便覧を開くと「近現代名詩選」というページがあった。*1

そこに挙げられた作品のひとつが「ぼろぼろな駝鳥」である。

教科書にも載っているらしいが、私には習った記憶がなかった。

だから最近まで知らなかったのだが、妙に訴えかける、迫ってくるものがある詩だ。

*1:ちなみに、便覧では詩の4行目が抜けていたが、ほかで引用しているサイトをみて全文を知れた。