塩田千春展 & コレクション2

パンフレットより


「塩田千春 精神の呼吸」
「コレクション2」
国立国際美術館(7/1-9/15 2008) 9/6観覧


モディリアーニ展の前にみた。

塩田千春展の開催は以前から知っていた。というのは、去年ベルギー展*1をやってた頃にはすでに、当館HPで作品のための靴を集めていたから、ちょっと気になっていた。その本番である。塩田千春氏は大阪出身で現在はベルリンを拠点に活躍されている作家。今回の展示は新日曜美術館のアートシーンでも取り上げられていた。


国立国際美術館は地下が展示室で、上階からエスカレーターで降りながら、件の靴の作品(「大陸を越えて」)が姿を現したのはなかなか壮観であった。
「大陸を越えて」は、一点から放射して伸びる赤い毛糸の先に靴が結び付けられた作品…と書いたが、靴にくくられた毛糸が後方の一点に集約される作品、なのかも知れない。

靴には、提供者がそれにまつわるエピソードなり、込められた思いなりを記した紙が一緒に添えられている。これは募集時に作家側から注文していたもの。いくつか読んだ。

私もかかとが磨り減って雨水がしみ込む古いやつを送ろうかと思ったが、おもしろ話とかないからやめといた。まあ、履き古したからどうぞ的な提供品もあったのだが。


これとは別の大きな作品「眠っている間に」は、いくつもベッドが並んだ部屋に張り巡らされた黒い毛糸が、絡み合い、埋め尽くすというもの。雁字搦めの糸をみてると、これらは完全な再現というのが不可能な表現だなと思った。しかしこういう<インスタレーション>は、その場にあわせてサイズを変えるやり方らしい。

糸を使うのは作者の手法のひとつのようで、上述2作品のほか「トラウマ/日常」というオブジェ?などもそうだった(これは黒い糸)。糸の色の違いが与える印象を決めている。実際、「大陸―」はポジティヴなメッセージなんだろう。
ちなみに、ハマナカ株式会社の協力とあったから、ここが毛糸のもとだろう。


もうひとつの大型作品は「After That-皮膚からの記憶」。3着の泥の付いた巨大なワンピースが、腕の部分がつながった形で吊られている。仏像好きな私からすれば、まるで丈六の観音像の衣のようで面白く感じた。こういった実物をみるとき、でかいだけで説得力がある。
いつも思うことだが、映像や写真でみるよりも、本物に触れるのはやはりいい。


塩田展の奥に進むと、別にコレクション展が行なわれていた。宮本隆司石内都という人の作品があった。両氏とも写真作家である。
宮本氏の作品は消えゆく廃墟や汚れたガラス越しに撮った風景等で、石内氏のほうは老人の、あるいは事故や病気等の傷跡・手術痕といった皮膚に迫ったシリーズなど。


塩田作品・コレクション展示品ともに、どちらかといえば陰鬱な印象を受けるものが多かったが、それがよくないというわけではない。光が当たるところは明るくよく見えるが、むしろ魅力を感じるのは影になった部分だったりする。

*1:「ベルギー王立美術館展」@国立国際美術館(4/7-6/24 2007)。07/06/21,22の日記参照。