奈良欲・奈良浴 その4
(7/10の日記のつづき)
白毫寺から戻る途中、この日もうひとつ行っておきたかった場所へ。
新薬師寺の隣にある奈良市写真美術館です。
この春から館の名称が「入江泰吉記念奈良市写真美術館」に改められました。
数年前から一度行ってみたいと思っていたのですが、それは写真に関心があるというより、経験としてこの美術館を見たいという興味からのことでした。
館名に冠される入江泰吉(1905-1992)は奈良出身の写真家。戦前は大阪で文楽の撮影等で活躍、戦後奈良に戻り、地元の風景や仏像を撮り続けました。最晩年にすべての作品を奈良市に寄贈、これが写真美術館の収蔵品の中心となります。平成4年1月逝去。その年の4月に美術館は開館しました。
彼のことは、前に「美の巨人たち」でも取り上げられていたと思いますが、そのときは番組をよくみていませんでした。
建物の外観は、唐招提寺金堂などがすぐに連想される寄棟造風で、展示室等は地下に造られています。設計は(何かと話題の)黒川紀章氏です。
この日は「明治・大正・昭和 一瞬の記憶」*1という展覧会をやっていました。
入江泰吉に、工藤利三郎(1848-1929)、津田洋甫(1923-)という、いずれも奈良にゆかりのある3人の写真家の作品を時代ごとに展示したもの。工藤利三郎は開国前に徳島で生まれ、その後奈良で写真館を開いた人物で、彼の写した古美術写真は資料的な価値も高いそうです。津田洋甫の自然を撮った作品からは、入江作品に比べると感情移入の度合いがより大きくはっきりと表れているようにみえました。
もっとも印象に残ったのは入江泰吉の写真、とくに奈良の風景を写した大きなカラー作品でした。
思えばこれまで写真といったら、チラシに載ってるものとかポストカードのサイズでしか私は見ていなかったようなものですが、大きく伸ばされた作品(写真の規格はよく知らないがB1サイズ?)をみると、さすがに写真の世界に引き込まれるようで、写真の芸術性を思い知らされた気がしました。
大きな風景写真の中には、美の永遠性というものが封じ込められているようでした。まさに展覧会のタイトル通り「一瞬の記憶」。写真とは肉眼で見えるものを、ただカメラで撮っただけではないのだということ、写真でのみ残せるもの・伝えられるものがあるらしいということが、今更ながらわかったように思いました。
帰る前に猿沢池へ寄ると、ちょっとした鴨川べり三条〜四条間のような状態になってました。↓
ここが奈良でのそういうスポットなのでしょうか。
但し若いカップルばかりではないところが、奈良らしさなのかもしれません。
(「奈良欲・奈良浴」おわり)