をこ は 馬鹿の意

「鳴呼絵(をこえ)」というのは戯画の一種だそうで、俗っぽくいえば下ネタ満載のものもある。
平安時代には既に存在しており、鳥獣戯画のごとく鳥羽僧正を作者とする伝承もあるらしいが
その当時に描かれた作品はどうも現存していないらしく、後世の模写によってその姿が知られる。
以前『平安時代史事典』の何かの項目で、のちの春画の源流ともいうべき絵画が平安期につくられた
云々とあるのを見たおぼえがあるが、この鳴呼絵のことだったと思われる。

「大絵巻展」*1のグッズ売り場だったと思う、私は鳴呼絵(と思われる)を図版入りで紹介した本*2
をみつけて立ち読みしたが、この部類の絵を実見したことはこれまで無かった。


それが今日、思いがけず実物をみることができた。
ひと目みて「ああっ、コレは…!!」と思ったそれは、その名も「放屁論絵巻」という紙本墨画の絵巻物。
幕末の復古やまと絵師として知られ、古画の模写もよくした冷泉為恭*3による模本である。
解説キャプションに「内容は見ての通り」と書いてあったのが笑えた。
まあ確かに見ての通り、題の通りで、人々が屁のこきあい・かけあいに興じるというものである。
頭にかぶった笠を屁の勢いで飛ばすのもあれば、まるで「屁のクロスカウンター」のようなのもある。
…馬鹿馬鹿しくみえて、なかなか躍動的な筆づかいのようだ。
平安時代の絵巻にマンガ・アニメーションのルーツをみいだす見方は前からあるが、
この「放屁論絵巻」も同じことがいえよう。友沢ミミヨっぽさもあるか。
いやはや、珍しいものがみられてよかった。


さて検索してみたところ私が実際にみた絵&解説がみつかった。
なんだか哲学的な部分もある解説も面白い。
平安の昔に華麗なイメージをもっている方は、ぜひご覧ください。
http://www.konpira.or.jp/museum/houmotsu/permanent/section/C.html

*1:「大絵巻展」@京都国立博物館 4/22-6/4 2006

*2:鳥羽僧正の秘画『勝画』の発見たぶんこの本。図版で紹介されてたのは「○○くらべ」的な作品で、ユーモラスかつショッキングな絵だった。

*3:冷泉為恭については9/2の日記も参照。