京博「最澄と天台の国宝」その3

第四章 天台の密教(中央・6・7室)

中央ホールに足を踏み入れると、そこは予想通り仏像が大挙して展示されていた。
全体を見渡して驚いた。圧巻の展示。
…おぉ…すげぇ……と、ひとりで来てたのに思わず口に出た(と思う)。


※ 以下には「最澄と天台の国宝」東京展のネタバレになりうる内容が含まれます。


空海*1のときくらいから京博の特別展では、彫刻作品をケースに入れない場合、
舞台のように組まれた台の上で展示するという方式が用いられている。
これの正式名称はわからないが、私は「ステージ型展示」などとよんでいる。
今回大きな規模で組まれたそのステージに、等身大以上ある仏像が並んでいるさまは、
中央ホール自体が列柱の立つ明治洋風建築であることもあいまって、
まるでギリシャ・ローマの神殿のようだ。
ギリシャやローマなんて行ったことないけどな。


そんなことを考えつつ、手前にある展示からみていく。
このとき、奥側の展示は視界に入らないようにしている。
すこーしずつ楽しんでいきたいから。
中央ホールの展示については、「全曲紹介」的にすべてに触れていこう。


延暦寺千手観音菩薩立像
この千手のみ、独立したケースで展示。カニのような脇手で、インド顔の千手さん。
大津市歴博で一度はお会いしてます。*2
白檀で出来ていると思ってたが、図録によると代用材の檀像らしい。
脇手はすべて後補か。惜しいな。
新日曜美術館」で、アップで映されていたのがよかったな。


青蓮院・兜跋毘沙門天立像
青蓮院…これまた一度も行ったことがないお寺。
この毘沙門天も初対面。最近、重文指定されたとのこと。
兜跋毘沙門天像は、東寺のにならって造られたものがいくつもあるが、
へー、こんな兜跋もいたのか。知らなかった。
こんな精悍な顔つきをした兜跋もめずらしいと思う。
おっ、この左右で表情の違う鬼面の胸飾り、興福寺の仏像*3と共通する特徴ですな。


で、この像は快慶作の可能性があるらしい。
ニューヨークのバーク・コレクションにある不動明王像との関係から
考察された説だそうな。
バーク・コレクション…ALAさんが東京の来日展に行ってたっけ。
関西にも巡回してくるが、会場はあのMIHO MUSEUMだ。
誰か誘ってくれるなら行こう…


無動寺 不動明王・二童子坐像/大威徳明王坐像/金剛夜叉明王立像/降三世明王立像/軍荼利明王立像
上に掲げた名称は出品目録ママ。文化財の指定名称も、おそらくこの通りなんだろう。
五大明王像」と、一括りにしてもよさそうなところを、一躯ずつ分けているのは
制作年代に諸説あることと関係あるのだろうか?
いまや多面多臂の四明王をみても、むやみに興奮しなくなったようだ。
もっともそう思う理由は、この像の展示の様子が写真で新聞に載ってたから
事前に出品を知ってたこと、また比較的小型で、整った作風をしていることに
あるのかもしれない。


でもセイタカ童子は秀逸。岩上で足をくずし気味にすわっていて個性的だ。
悪態をつくおっさんのようにもみえる(失礼)。


明王院千手観音菩薩および両脇侍立像
天台独自の三尊形式。平安後期らしい特徴はあるが、
作者は京都で一線バリバリで活躍してた仏師ではなさそうだ。
展覧会場での印象は薄いのだが、あらためて図録でみると、
千手の脇手のバランスがよいね。
千手観音における脇手のつくりは、その像全体の印象をも左右すると思う。
脇手の長さや、「ひじ」があるかないかとかそういう点で。
(つづく)

*1:空海高野山」@京都国立博物館 4/15-5/25 2003

*2:比叡山麓の仏像」@大津市歴史博物館 10/4-11/16 2003

*3:現・興福寺南円堂 四天王像のうち持国天立像、同東金堂 文殊菩薩坐像